読書感想文10「労働組合とは何か」

20年ぐらい前に「ナニワ金融道」の作者青木雄二が、「就職するなら労働組合がしっかりしている所がいいよ。」と言っていたのを思い出しました。

 

「労働者の相互扶助の機能はたんなる助け合いにとどまらない。仕事や生活で不安をかかえていると、賃金が安くても働こうとする者がでてくる。競争が生まれる。それはいま働いている者たちの足を引っ張ることになる。だから基金からの費用で生活をいくらか安定させようとしたのだ。」

(我々が職場でしのぎを削って、その結果脱落者がでる。その人はしかたないから安い賃金で働く。我々に賃下げ圧力が返ってくる。我々労働者に得する人間はいない。)

 

「なぜ労働組合が遍歴制度を組合活動の柱にすえたのだろうか。イギリスの労働組合の遍歴制度は技能取得のためというよりも、労働力の需要と供給のバランスを組合側に有利にする目的でおこなわれた。つまり労働市場での供給を制限することで、労働条件の改善をはかることが狙いだった。」

労働市場は経済的に規定されてできるものでも、自然にできるものでもない。労働市場をつくる主体は労働組合に他ならない。」

労働市場を自分達で作る!おそるべき主体性。)

 

「労働者が労働組合という戦い方をつかむには、多くの経験を必要とした。その前には雇い主に犯罪などの形で個人的な犯行を試みた。これまでの農業や自営業において、みずからの労働の成果はみずからのものだった。しかし今では汗水たらして生産した品物を雇い主が自分のものにしてしまう。これをむしろ逆に「盗み」と思うのも自然であった。労働者は自分が作ったものを「盗み」、働きもせずいい暮らしをしている雇い主からその財産を奪ったりした。泥棒として警察に突きだされると、うらみに思って雇い主を傷つけることもあった。だがこの個人の盗みという方法は社会的に処罰されるだけで役に立たないことを知るようになる。バラバラではなく、結束して反抗することの大切さがわかる。」

 

「経営者が労働者を過酷な状態に追いこんでいるのは当然だが、経営者の横暴で悪辣な仕打ちが労働者の悲惨な状態を生んでいると、短絡的にとらえていない。むしろ敵ではなく、味方にこそ、労働者の内部にこそ悲惨な状態を生みだす根源があると指摘している。ここが重要である。

「「労働者自身のあいだの避けられない競争」に状態悪化の原因があるのだから、これを引っくり返せばいい。競争ならば競争を規制すればよいということになる。」

(ライバル企業ならまだしも、なぜ隣の人と殺し合いをしないといけないのか?)

 

労働組合は、もし自分の任務をはたそうというのであれば、政治団体と関係したり、そうした政治団体に従属したりしてはけっしてならない。こうしたことが起こると、労働組合に致命的な打撃を与えることになる。(マルクス、1869b)」

(これは本当なのか?共産党マルクスに逆らっている?野党共闘がごちゃついているけど、二重に狂っている!)

 

労働組合と労働者政党」「とが同じものの表裏の関係だと考えられたり」してきたが、「このような誤解は」「労働組合の順当な成熟のための妨げになってきた」(大河内、1963(太った豚よりやせたソクラテスの人?))と述べた。政党が過度な政治課題を労働組合に負わせることで、幅広い多くの働くものから労働組合を遠ざける結果になり、それが労働組合の「順当な成熟」を妨げたことは否定できない。

(なんで反原発とか護憲とか労働組合がやるんだよw)

 

著者の木下武男さんは、日本の労働組合については、ぜんぜん成熟していなくて、本当の労働組合を求めて、西洋の労働組合の歴史や意義を語ってくれます。

私としては、日本の労働組合が成熟してこなかったのは、特に大きな問題も無かったし、平和だったので労使協調でよかったのだと思います。和を貴ぶ日本人ですし。(日本の憲法が未成熟なのも、天皇がしっかりしてて、明文化されていない掟が強力な社会だから成熟しないのだと思います。)

しかし、今後のことを考えると、我々庶民も「和を貴ぶためにどうするか?」ということを考えて、それを実行する手段として労働組合を盛り上げていけたらいいと思います。

 

「労働者は仕事が終わると、パブに集まり、夕食後のひとときを過ごす。労働や生活の苦しさが話題になる。酒に助けられて、仕事の不満や雇い主の仕打ちが声高に話される。パブの主人は労働者に同情的で、雇い主に密告することはない。」

労働組合は居酒屋から生まれたといわれる。)